古田雄介

家族がデジタル遺品を残したら・・・

これまでは持ち主としてデジタル資産の対策を考えてきましたが、家族がデジタル遺品を残して亡くなった場合はどのように対応すればいいでしょうか。 最後に遺族の立場からデジタル遺品を考えてみましょう。

非デジタルの情報もできるかぎり集める意識が大切

最初にすべきは現状把握と情報収集です。

メインで使っていたパソコンやスマートフォンにログインできれば、その中身を中心に調べていくほうが効率的でしょう。 なぜなら、「金融資産」や「支払い契約」はブラウザのブックマークや閲覧履歴、メール、チャット、アプリなどから見つかることが多いからです。 「仕事関連」や「思い出関連」を探す場合は、それらに加えて「マイピクチャ」や写真アプリなどもチェックしたほうがいいでしょう。

ただし、故人のログイン設定のままSNSアカウントを開いたりメールを送受信したりすると、不正アクセス禁止法に抵触する恐れがあります。 現実には、故人のアカウントでSNSやブログにログインして訃報や葬儀の告知を掲載する遺族は昔から多く、それを運営側がとがめた例はありません。 喫緊の対応ということで黙認されていますが、悪意のある改変や情報の抜き出しなどがあれば問題視される可能性があります。 そうした判断の難しい領域での作業になることは念頭に置いてください。

また、通信契約の書類やネット銀行のカード、取引履歴などが物質的な書類として残っていることも多々あります。 お葬式の合間に、故人の同僚の方から「そういえばFXやってるって話してたっけ」といった話を聞いたという方もいました。 そうした非デジタルの情報を併行して集めることも肝心です。 見えにくい遺品と向き合うわけですから、なるべく多くの情報を集めて対処していくしかありません。

こうした一連の作業を通して、対処すべきデジタル遺品リストを作るわけですが、何を対処すべきかは、 「自分のデジタル資産を生前整理しよう」「託すべきものをきちんと託す方法」のコラムでお伝えしたとおりです。 手間は大きくなりますが、生前準備と遺品整理は表裏の関係にあるので、要所は同じと考えてください。

「自分のデジタル資産を生前整理しよう」のコラムで掲載した上流・下流のイメージ図です。 黄色の「★」は家族にとって大切なデジタル資産、黒の「×」はどうでもいいものです。 家族の立場では下流側にしか立てず、資産をすくい取る苦労は持ち主の生前整理に大きく左右されます。

なお、スマートフォンや携帯電話の通信通話契約を解除するといった実作業はこれらの作業の後にしてください。 葬儀後に重要なメールやメッセージが届くこともあります。


スマートフォンのロックを闇雲に開くのは3回まで

辛いのはメインで使われていたパソコンやスマートフォンのロックが解除できないときです。 パソコンに詳しい人なら、物理的にHDDやSSDを抜き出すといった手も使えなくもないですが、スマートフォンは厳しいでしょう。

解除キーが思い当たらないときは故人や家族の誕生日などをとりあえず試してみたくなりますが、その作戦は3回までで止めてください。 5回以上連続でミスすると「●分後にお試しください」という表示が出ますが、バックグラウンドでセキュリティレベルが上がり、専門家でも解除がより難しくなると言われています。 さらに10回連続でミスすると、設定によっては中身が空っぽになってしまうこともあります。

こうなったら一旦ロック解除は諦めて、他の機器やクラウド上にあるバックアップを探すといった次善策に切り替えるのが得策です。 そのうえで、上記のような多角的な情報収集を続け、プロのデジタル遺品解析サービスに依頼する道筋も検討してみてください。 ネットで「デジタル遺品 スマホ」などと検索すると、該当するサービスが複数ヒットすると思います。 具体的な数字で実績を表示しているところを選び、まずは電話やメールで見積もり相談をすると失敗しにくいです。

なお、プロのデジタル遺品解析サービスであっても、確実にロック解除できるわけではありません。 一般的に、販売されたばかりの最新機種や流通量の少ないレアな機種は、解析のノウハウが蓄積していないため難易度が上がると言われています。 また、ノウハウが蓄積された往年の人気機種であっても、OSのアップデートによって過去の方法が使えなくなることもあります。 すぐに依頼しない場合も、自動でインターネットにつながる環境は避けたほうがよいでしょう。



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