古田雄介

隠したいものをきちんと隠す方法

隠しておきたいものの措置は、家族へ託したいものへの道筋をきちんと整えたあとで実行しましょう。 これはマナーの問題ではなく、効果を高めるために必要な流れです。その後の運用にも気を遣いましょう。

託す道筋から逸れたところに隠したいものを置くのが鉄則

「自分のデジタル資産を生前整理しよう」のコラムでリストアップした最後の項目「秘密にしたいもの」への対策は、 家族への託す道が完成したあとに初めて取りかかれます。 なぜなら、家族が踏み込む導線から触れない場所に保管しておかなければ意味がないからです。 緊急時のメインストリート上には一切顔を出さないようにして、デジタル特有の気づかれにくさを逆に利用するわけです。 そのうえで、秘密にしたいものだけ暗号化したりして防御を固めるといった策も有効です。

たとえばパソコンに保存している場合、託したいもののフォルダやショートカットアイコンをデスクトップに配置しておけば、 ドライブ内のフォルダをくまなく探られるリスクを大幅に下げられます。 『はじめてのエンディングノート2』のアイコンを置いておくのがいいでしょう。

ただし、最近のパソコンには頻繁にアクセスするファイルのリンクを自動で目立つ場所に並べる、ちょっとお節介な機能があります。 Windowsならスタートメニューの「自動追加機能」や、フォルダの右脇にある「クイックアクセス」の表示機能はオフにしておきましょう。 それに加えて、Windows Pro標準の「Bit Locker」のような暗号化機能を使ってドライブ単位で高度な鍵をかけるとさらに強化できます。

Windows 10の「フォルダーオプション」。最下段の「プライバシー」項目のチェックを両方外せば、クイックアクセスへの自動追加を防げます。

また、インターネット上で閲覧履歴を残したくないものがあるなら、 そのサイトを開くときだけブラウザの「シークレットモード」や「プライベートブラウズ」を利用して起動するのがいいかもしれません。
Google Chromeの「シークレットモード」は[Cntl]+[shift]+[n]で起動できます。 Internet ExplorerやEdgeの「InPrivateブラウズ」なら、[Cntl]+[shift]+[p]です。

とはいえ、普段の利便性を排してまで万が一の際に備えても長続きしません。 2~3週間試してみて、ストレスを感じないラインを探っていく意識を持つことが肝心です。



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機器まるごとロックは細心の注意のうえに成立する

スマートフォンの場合も基本は同じです。 家族に託すべきもののアイコンは1~2ページ目に並べておくのが親切でしょう。 隠したいものは奥のほうのページやフォルダ内にしまっておいたり、 いっそ別の端末やクラウド上に保存してシークレットモードのブラウザアプリで表示したりといった手がよいかもしれません。

また、複数のデジタル機器を使っている場合は、メインの端末(たとえばスマートフォン)に託したいものを集約したうえで、 秘密にしたいものを保管している機器のロックキーだけは内緒にしておくという手もあります。 しかし、それはしっかりと託す道を維持できたうえでの手段です。

暗号化機能を搭載した外付けHDDを常用するのも有効です(写真はアイ・オー・データ機器の1TBドライブ「HDPD-SUTB1」)。

お金関係や思い出関係など、家族が知りたいものを無視してデジタル機器のロックキーを秘密にするという手段は絶対に避けましょう。 家族は多大なストレスを受けながらも必死で中身を知ろうとします。 「家族がデジタル遺品を残したら・・・」のコラムでも触れますが、データ復旧会社などのデジタル遺品サービスに依頼すればスマートフォンでも解除できるケースは十分にありますし、 他にもバックアップや閲覧履歴を辿るなど様々なアプローチが可能です。 そうしてロックが突破された後は、血眼で中身を調べられるはずです。そんなリスクを背負うのは、自分本位で考えたとしても得策とは言えません。



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