デジタル遺品を研究するフリー記者 古田雄介

自分のデジタル資産を生前整理しよう

デジタル遺品で家族を困らせないようにする最大にして最も効率的な方法は、持ち主がデジタルの資産をきちんと管理しておくことです。 自分に万が一のことが起こった際の備えをしておきましょう。

見つけにくい資産ほど持ち主=上流側の管理が重要になる

遺品整理の手間は、亡くなった持ち主が生前準備しているか否かによって大きな差が生じます。 それはデジタルに限ったことでありませんが、デジタル資産は物体的な資産よりも見えにくい(=デジタル環境を通してしか実態が把握できない) という特性から、その差が拡大すると考えてください。

デジタル資産の持ち主である本人が“上流”できちんと備えておけば、“下流”でしか触れられない家族たちに余計な苦労をかけずに済むというイメージです。

家族にとって重要なデジタル資産は黄色の「★」、それ以外は黒の「×」とみてください。 Aパターンのように本人が何も考えずに残してしまうと、家族はすべてをかき集めて重要なものを探さなければなりません。 Bパターンのように本人が家族のことを考えておけば、いざというときの家族の作業が大幅に楽になります。


「機器」「お金」「人間関係」・・・内容別に資産をリストアップ

まずやるべきは、手持ちのデジタル資産のリストアップです。以下の項目を意識して書き出してみてください。 これは要所を把握するための作業なので、すべてのデジタル資産を網羅するような気構えは必要なく、箇条書きでどんどん並べていく感覚がちょうどいいです。 いわば『はじめてのエンディングノート2』に入力する前段階の作業といえるでしょう。


  • デジタル機器・・・パソコン、スマートフォン、携帯電話、外付けHDDなど
  • 金融資産・・・ネット銀行やネット証券会社の口座、オンライン保険、暗号資産(仮想通貨)など
  • 支払い契約・・・月額や年額支払いの定額サービス、通信通話契約など
  • 仕事関連・・・社用データ、連絡先、SNSアカウント、メールのやりとりなど
  • 思い出関連・・・家族や友人と共通の写真、趣味のブログやSNSアカウントなど
  • 秘密にしたいもの・・・誰かに見られたら恥ずかしいもの、死後も隠しておきたいもの

デジタル機器」は、デジタル資産の容れ物であり入り口でもあります。職場に置いてあるものも含めてリストアップしてみましょう。

「金融資産」と「支払い契約」は、直接お金が絡むもの全般と捉えてください。 ただし、購入済みで追加料金の発生しないアプリや動画、およびネットショップのアカウントなどは無視して構いません。

「仕事関連」と「思い出関連」は、周りの人間に関わるものと捉えてください。 自分の持ち物であっても、「これ見られなくなったら困るだろうなぁ」と思うものは何でも書いていきましょう。 逆に「秘密にしたいもの」は、周りの人間に関わらせたくない大切なものをまとめる感覚です。

リストを作っていると、「このSNSは仕事用とプライベート用を兼ねているし、一部は家族に見られたくない内容もある・・・」 というように、項目分けに迷う部分も出てくると思います。 その場合は後から整理するつもりで、とりあえずは関係するそれぞれの項目に書き入れてください。 また、どれにも当てはまらないけれど、捨て置けないものがある場合は「その他」という項目を作ってメモしておくといいでしょう。

この作業は、やはりデジタル環境に親しんでいる人ほど手間がかかりますし、完成度を追求するといつまで経っても納得しきれないかもしれません。 ただ、ここで燃え尽きては本末転倒ですので、長くても1時間程度で済ませて次のステップに進んでください。 その後に思い出したデジタル資産が出てきたら、そのときに追加すればいいですから。



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