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喪中はがきにまつわる慣習とは|内容とケース別の文例を紹介
喪中はがきは身内に不幸があった年に出すものだ。年賀状と比べて出す機会が少ないことから、喪中はがきを書く際のルールに詳しくない人は多いのではないだろうか。ここでは喪中はがきに含める内容と注意点、例文を紹介する。
「喪中はがき」とは
まず喪中はがきとは、1年以内に身内に不幸があった場合に、「一定期間は喪に服すため新年の挨拶を遠慮したい」という旨を知らせるために送るものだ。一般的に「喪中はがき」といわれることが多いが、正式名称は「喪中・欠礼はがき」「年賀欠礼状」と呼ばれる。
日本では人の死を穢れとして扱っていた時代があり、喪中はその穢れを周囲に広めないための慣習だった。しかし、近年における喪中は故人に対して哀悼の気持ちを持って過ごす期間という意味合いが強くなってきている。
原則としてお祝い事への参加は避けることになるため、新年の挨拶とともに祝いの言葉を記す年賀状も、喪中には送るべきではないというルールが広まった。
なお、12月に不幸があった場合には喪中はがきが間に合わない可能性が高い。急いで出しても送り先はすでに年賀状を投函してしまっているかもしれない。そのため、年の瀬の不幸の知らせは年越しのあと、寒中見舞いとして関係者に挨拶をするのも一般的な対応方法だ。
喪中はがきにまつわるルール
喪中の期間は明治時代に制定された太政官布告を基準に決められた。日本の長い歴史から考えれば、喪中は比較的新しい慣習だといえる。
喪中は一定期間と前述したが、具体的には1~13ヶ月で、これは自分から見た故人の続柄によって異なる。喪中はがきを送る必要があるのは、1~2親等までの親族に不幸があった場合だ。それぞれの親等と続柄は以下のとおりである。
・1親等 両親、配偶者、配偶者の両親、子
・2親等 祖父母、兄弟姉妹、孫
このうち1親等の子以外は12~13ヶ月、子と2親等の祖父母は3~6ヶ月、兄弟姉妹と孫は1~3ヶ月が一般的な喪中期間となる。
ただし喪中はがきを送る時期や何親等の親族までの死を喪中の範囲とするかは、宗教や地域、故人との関係によっても異なる。
不幸があった親族が遠縁でも同居していたり、関係性が深くお祝い事をする気になれなかったりする場合には、喪中はがきを送っても良い。
これらを踏まえた上で、一般には
・2親等までの親族に不幸があった場合に
・例年、年賀状を交換している相手に対して
・12月初旬までに届くように出す
ということになっている。明確なルールではないが、一般的な考えとして覚えておくと役立つだろう。しかし、最近は2親等の祖父母の場合、同居していなければ喪中はがきは出さないという例も多くなってきているようだ。
また、仕事関係の方へはあえて喪中はがきは出さず、通常どおり年賀はがきを送るという公私を分ける考え方も増えてきている。いつまでに出すかについては、送り先が年賀はがきの準備を始めるまでということで、11月中に送ってしまうのが望ましいだろう。
喪中はがきに書く内容
喪中はがきを書く機会はそう多くない。いざ出すとなったときに、なにを書けば良いか分からなくなってしまうこともあるだろう。ここでは喪中はがきに書く内容をまとめる。
年賀欠礼の挨拶
喪中はがきを出す目的は、年賀状のやり取りをしている相手に新年の挨拶を遠慮したい旨を伝えるためだ。はがきの書き出しは「喪中であるため、失礼ながら新年の挨拶はできない」といった内容の一言から始める。
また、「年賀」は祝い言葉のひとつのため、「年始」「年頭」「新年」といった言葉を使用することが望まれる。
冒頭は「喪中のため」もしくは「喪中につき」で始め、以降は
・年末年始のご挨拶を謹んでご遠慮申し上げます
・年頭のご挨拶を失礼させていただきます
と続けるのが一般的だ。
故人についての情報
喪中はがきを受け取る相手の中には、そのはがきで初めて故人が亡くなったことを知る人もいる。よって、喪中はがきには故人の情報を書かなければならない。
含める内容は「誰が」「いつ」「何歳で亡くなったか」の3点だ。「誰が」の部分は喪中はがきを出す人から見た故人の続柄で記載する。「いつ」の部分は「本年◯月◯日、去る◯月◯日、令和〇年」といった形で書く。
何歳で亡くなったかは、ひと昔前までは数え年で書かれることが多かったが、昨今は満年齢で書くことが多い。満年齢で書く場合は◯◯歳と、数え年で書く場合は享年◯◯と後ろに歳をつけずに書くことを覚えておきたい。
例文は以下のとおりだ。
・本年◯月◯◯日 父◯◯が八十二歳にて永眠いたしました
・去る◯月◯◯日 父◯◯が享年八十三にて永眠いたしました
送り先への感謝の言葉
これまで年賀状をやり取りしてきた相手は、故人にとって仲の良い友人や、お世話になった人であることが想像できる。そのため、喪中はがきには故人から相手に向けた感謝の気持ちを代筆する。
これまでお世話になったこと、相手の健康を気遣っていることと、今後も付き合いを願いたいことを含めると良いだろう。
故人が亡くなったからといって、生前に故人がお世話になった相手との関係が切れてしまうのは悲しいものだ。相手もせめて年賀状のやり取りは今後も続けたいと考えているかもしれない。
そのような相手に対し、感謝とともに付き合いの継続を伝えるのは、家族として故人の思いを引き継ぐことにもなるのではないだろうか。
例文は以下のとおりだ。
・これまで賜りましたご厚情に心から御礼申し上げます
・明年も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
・寒さに向かう折からくれぐれもご自愛ください
日付
本文を書き終えたら日付を添えておく。喪中はがきを書いた日なのか、ポストへ投函する日なのか迷いやすいところだが、ここは年月のみの記載で良い。
喪中はがきを書いた日付を記載してしまえば、投函までに日を置いてしまった場合に到着時点の日付と大幅にずれることがある。ひと昔前まではポストへ投函する日を記載するのが一般的ではあったが、それでも相手の手元へ届くのは1~2日後だ。
その点、年月の記載で止めておけば日付のずれは生じなくなる。なお11月中に投函する場合でも、記載する月は以下のように
・令和◯年十二月
とするのが暗黙のルールとなっていることも、あわせて覚えておきたい。
差出人
喪中はがきには、差出人の名前と住所、電話番号を記載することを忘れてはならない。はがきの表面(宛名面)・裏面(文面)のどちらか記載する場合でも、差出人の情報は左下に書く。
表面と裏面のどちらに書いても特に問題はないため、スペースの都合にあわせて選べば良い。
なお差出人は個人名だけでも、夫婦ならそれぞれの名前を連名で書いてもかまわない。連名にするなら年賀状の差出人を記載するのと同様に、苗字と夫の名前、隣に妻の名前のみという形で書くようにする。
喪中はがきを書く際の注意点
喪中はがきを書く前に、知っておくべきマナーがいくつかあることをご存じだろうか。知らずに出すと、送り先に対して失礼にあたるおそれがある。ここでは注意点を5つ紹介する。
前文を省略する
手紙の基本的な構成は、前文、主文、末文の3つで成り立っている。前文には頭語と、頭語とセットで用いられる結語、そして時候の挨拶が含まれるが、喪中はがきなどのお悔やみ事を伝える手紙やはがきを書く際には前文を省略するのがルールだ。
・頭語 拝啓、拝呈、謹啓など
・結語 敬具、敬白、謹言など
・時候の挨拶(12月) 寒冷の候、冬至の候、歳末の候など
これら前文に該当する文面はすべて書かずに、主文と末文のみを書けば良い。
句読点を入れない
儀礼的な挨拶を告げる目的の手紙やはがきでは、句読点を入れないというルールがある。喪中はがきに関わらず、結婚式の招待状など慶事のお知らせも同様に句読点を入れてはならない。
また、文章の書き方として、段落の始まりは1文字分下げることを習った人も多いだろう。これも喪中はがきでは適用されず、すべての行において行頭の高さを合わせるのが正しい。
いずれも意識しないと忘れてしまうおそれがあるので、特に注意したいポイントだ。
年賀欠礼のことのみ書く
喪中はがきに含める内容は前述したとおりで、それ以外は書くべきではない。直近で近親者の結婚や出産などお祝い事があったからといって、それを書き添えるのは不適切だ。また、久しく会っていない相手だとしても近況報告は避けたい。
あくまでも喪中はがきで伝えるのは、新年の挨拶を遠慮したい旨だけだ。それ以外に伝えたいことがあるのなら、喪中はがきとは別に報告の手紙を書き、改めて送るのがよいだろう。
ポップなフォントを避ける
お悔やみ事に関する挨拶の手紙に、ポップなフォントは適していない。楷書体や明朝体など読みやすく落ち着いたフォントを使うのが好ましいだろう。近頃はゴシック体でも許容される傾向にある。
また、文字の色は薄墨もしくは黒で書く。薄墨を選ぶのには理由があり、墨が涙でにじんで薄くなったさまを表す。喪中はがきのデザインに合うほうを選べば良いが、薄墨は控えめな印象、黒ははっきりとした印象を与える。
ただし、薄墨で住所や名前を書くと郵便局の機械で読み取れなかったり、配達員が読みにくかったりするおそれがある。そのため、宛名面は黒で書くか、もしくは郵便番号だけを黒で書き、宛名を薄墨で書くことをおすすめする。
落ち着いたデザインのはがきを使用する
喪中はがきを選ぶ際、華美なデザインを避ける傾向にあるのは昔から変わらない。シンプルで、枠をグレーで囲ったものが喪中はがきの定番デザインといえる。
郵便局で販売されている喪中はがきなら、胡蝶蘭柄のデザインが一般的だろう。そのほか菊や百合、蓮の花も喪中はがきのデザインに用いられやすい花だ。
ただし近年は喪中はがきのデザインも多様化してきている。洋風な花や、鳥をデザインしたものも可とされる風潮が徐々に広まっている。花柄のはがきを選ぶなら、描かれている花言葉を調べてその意味がお悔やみ事にふさわしいかどうか判断すると良い。
喪中はがきを受け取る相手がどんな気持ちになるか、考えることはとても重要だ。たとえば故人ととても親しくしていた相手に送る喪中はがきに限って、テイストを変えるのも選択肢のひとつである。
故人が生前に好んでいた花や趣味を連想させる物など、故人を思い起こさせるようなデザインを起用すれば、相手もしばし故人との思い出に浸れるだろう。
【ケース別】喪中はがきの文例を確認しよう
喪中はがきの文面は、状況にあわせて変える必要がある。最後に3つのケース別にどのような文面にすべきか、例文も混じえながら解説していく。
文例1.すでに葬儀を終えている場合
このケースで必要なのは、故人が亡くなった旨の報告が遅れたことに対する謝罪だ。相手を葬儀に呼ぶことができなかった理由も添えておくと良い。
例文は以下のとおりだ。
喪中につき年末年始のご挨拶を謹んでご遠慮申し上げます
本年◯月◯◯日 父◯◯が◯◯歳にて永眠いたしました
誠に勝手ながら
生前の故人の意思により葬儀は近親者のみで執り行いました
ご通知が遅れましたこと深くお詫び申し上げます
尚 お供えやご香典は辞退させていただきます
これまで賜りましたご厚情に心から感謝いたしますとともに
明年も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
寒さに向かう折からくれぐれもご自愛ください
文例2.故人の情報を伏せたい場合
喪中はがきには故人の情報を入れるのが通例だったが、近年では遺族の意向に沿い、故人に関する一切の情報を入れずに喪中はがきを出すケースも増えている。
この場合は主文と差出人の情報のみ記載しても、失礼にあたらないことを覚えておきたい。
例文は以下のとおりだ。
喪中につき年頭のご挨拶を失礼させていただきます
これまで賜りましたご厚情に心からお礼を申し上げるとともに
明年も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
お体にお気をつけて 穏やかな年末をお過ごしください
文例3.クリスチャンの場合
キリスト教には喪中という概念がないが、日本における喪中という慣習にならって喪中はがきを送ることがある。永眠という言葉は用いず、「天に召される」「主の御許に召される」などの表現を使うのが適切だ。
教派による表現の違いもあり、カトリックの場合は「帰天いたしました」、プロテスタントの場合は「召天いたしました」と書く。
本年◯月〇〇日 父◯◯が天に召されました
つきましては新年のご挨拶を失礼させていただきます
皆さまによき年が訪れますよう心よりお祈り申し上げます
喪中はがきの準備には筆まめが役立つ。喪中・欠礼はがきのデザインは50点以上収録しており、定型文は2,885点から選べる。
宛名は自動でレイアウトされるため、長い住所もはがきの範囲内にきっちり収めて印刷することが可能だ。喪中はがきに限らず年賀状、親しい人へ送る近況報告のはがきを書く際にはぜひ筆まめを活用してほしい。
まとめ
身内に不幸があると、親族が落ち込んでしまうのは当然のことだ。それでも日々は進み、新年もやってくる。秋が深まるころには喪中はがきを準備しておきたい。故人がお世話になった人たちへの感謝の気持ちを、故人に代わって伝えられるのは残された親族たちにしかできないことだ。
ここでまとめたルールや注意点、例文を参考に喪中はがきの準備を進めよう。
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