ためになる!? はがきの豆知識
送る相手に失礼のない丁寧な手紙を書くためには、手紙を構成する「要素」と「形式」をきちんと把握しておきたい。手紙は書き方の基本さえ知っていれば、あらたまった相手や目上の人に送っても恥ずかしくない手紙を書くことができる。ここでは、手紙やはがきに使える「手紙の基本形式」と「正しい手紙の書き方」をしっかりと押さえておこう。
はがきと手紙はどう使い分ける?
手紙として、正式なものとされているのは「封書」である。はがきは、基本的に手紙の略式と考えられているので、相手が目上の人だったり、お詫びなどを述べたり、改めて依頼ごとをしたりといった重要な場面では、封書を用いるのが基本的だ。また、万が一、内容を他人に見られると都合が悪いような場合にも、はがきではなく封書がよい。
年賀状や暑中見舞い・残暑見舞いといった季節のあいさつ状には、目上の人であっても、一般的にハガキを用いる。
手紙を構成する基本要素
丁寧な手紙文を構成する基本要素は、4つある。それぞれの名称と役割をまとめてみよう。
【前文】時候のあいさつ、先方や自分の安否、日ごろの感謝など
【主文】その手紙の目的・要件
【末文】先方のますますの繁栄、今後の厚誼などを祈る、結びのあいさつ
【後付】日付、署名、宛名
これら4つの基本要素に沿って、文例を作ってみよう。
構成要素 | 文例 | 説明 | |
---|---|---|---|
前文 | 頭語 | 拝啓 | 「拝啓」「謹啓」「前略」など |
時候のあいさつ | 紫陽花が美しい季節となりました。山田様におかれましては、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。 | 季節のあいさつや相手の健康を確認する文など | |
主文 | 起こし言葉・起語 | このたびは、引っ越しのお祝いに素晴らしいお品をお贈りくださいまして、誠にありがとうございました。 |
「さて」「このたびは」など、用件を書き始めるための言葉 |
本文 | 大変立派な緑の鉢植え、さっそく家族の集まるリビングに飾らせていただきました。大きなグリーンがあるだけで、空間が生き生きとしてくるようで、毎日嬉しい気持ちで眺めております。 ようやく荷物も片付きました。不便なところではございますが、ぜひ一度、足をお運びいただけたら幸甚でございます。何もないところではございますが、美味しい空気と地物の瑞々しいくだものをご用意して、お待ちしております。 |
もっとも伝えたいこと。用件。自分の気持ちや感想を述べると、事務的にならず、イキイキとした手紙になる。 | |
末文 | 結びの言葉 | 末筆ながら、山田様のいっそうのご活躍を心よりお祈りいたしております。季節の変わり目ゆえ、くれぐれもご自愛くださいませ。 | 相手の健康や、変わらない厚誼などを願う文 |
結語 | 敬具 | 「敬具」「かしこ」「草々」など | |
後付 | 日付 | 平成二十八年六月三日 | |
署名 | 葉書一郎 | ||
宛名 | 山田太郎様 | 相手の姓名と敬称。正式には、姓と敬称でよい | |
脇付 | 侍史 | 「侍史」「貴下」など、相手への敬意を表す言葉 |
頭語と結語のバリエーション例
「頭語」とは、手紙の冒頭に書く言葉で、相手に対する敬意を示すもの。起筆、起首、冒頭語ともいう。
「結語」とは、手紙の本文の最後に付け、締めくくるための言葉。
頭語と結語は、いろいろなバリエーションがあり、中には女性だけが使う言葉もある。また、発信時、返信時、緊急の場合など、シーンによって使われる頭語・結語が異なる場合がある。
基本的な組み合わせをまとめてみた。
頭語 | 結語 | |
---|---|---|
日常的な手紙 (発信時) |
拝啓 拝呈 啓上 一筆啓上 ・一筆啓上申し上げます ・お手紙差し上げます |
敬具 拝具 敬白 ・かしこ |
日常的な手紙 (返信時) |
拝復 復啓 敬復 ・お手紙ありがとうございます ・お手紙拝見いたしました |
拝答 敬具 敬答 ・かしこ |
改まった手紙 (発信時) |
謹啓 謹呈 恭慶 ・謹んで申し上げます ・謹んで一筆差し上げます |
謹白 謹言 ・かしこ |
改まった手紙 (返信時) |
謹復 謹答 ・お手紙謹んで拝見いたしました |
謹言 敬答 ・かしこ |
緊急の手紙 | 急啓 急呈 急白 ・取り急ぎ申し上げます ・走り書きのほど、お許しください |
草々 不一 不尽 ・かしこ |
手紙を再信する場合 | 再啓 再呈 ・重ねて申し上げます ・たびたび失礼ながらお便り差し上げます |
敬具 拝具 ・かしこ |
前文を省略する場合 | 前略 冠省 冠略 略啓 ・前文おゆるしください ・前略ごめんくださいませ |
草々 不一 不尽 ・かしこ |
・が付いているものは、女性が使う言葉
『筆まめでぃあ』からの、ワンポイントアドバイス
頭語で使われる「拝啓」や「一筆啓上」には、もともと「謹んで申し上げる」という意味がこめられている。そのため、「拝啓 謹んで申し上げます」などと書いてしまうと、意味が重複することに。・印の文章を使うときは、他の頭語と併記しないように気を付けよう。
前文~後付の書き方について
手紙を構成する4つの基本要素について、もう少し詳しくみてみよう。
■手紙の基本的な書き方 その①
書き始めは「前文」から
頭語から始まる、手紙の書き起こしの部分を「前文」という。気候の変化や季節の話題に触れることが多い。「初春の候」「若葉の候」のように、季節を感じる言葉に「候」を付けるものや、「春もたけなわとなってまいりました」「朝夕、めっきり涼しくなってまいりました」のように、話しかけるような言葉で書く場合がある。女性が書くときは後者のほうが柔らかい印象になる。 その後に、先方の健康や近況を尋ねる文章や、こちらの安否を述べる文章を続ける。お礼やお詫びの言葉を入れたいときは、この後に続ける。詳しくは、こちらを参照。
■手紙の基本的な書き方 その②
用件は「主文」で述べる
主文は、この手紙の本題、もっとも伝えたい用件をまとめた部分。前文を書き終わったところで、「ところで」「すでにご存じかと思いますが」「このたび」のような起こし言葉(起語)を用いて話題が変わったことを示し、用件を続ける。長くなりすぎないよう、要点をまとめておくとよい。伝えたいことが複数にわたるときは、優先順位の高い物から書くようにする。長くなる時は、段落分けをしたり、適当な個所に句読点を入れて、読み手がスッキリと読めるように工夫をする。
『筆まめでぃあ』からの、ワンポイントアドバイス
手紙で改行するときは、「私は」といった自分を表す言葉が行の先頭に来たり、相手の呼称(○○様)が文末に来たりしないよう、注意が必要。また、金額や数字を書くときも、2行にまたがらないよう、調整しよう。
■手紙の基本的な書き方 その③
手紙を締めくくる「末文」
主文の最後を、先方の健康や繁栄を祈ったり、今後の変わらない指導や厚誼を願ったりする「末文」で締めくくる。返信を求めたり、お詫びを述べたり、伝言を依頼したりする場合もある。 冒頭に付けた「起語」に対する「結語」で結ぶ。
■手紙の基本的な書き方 その④
忘れずに書き添えたい「後付」・「脇付」
後付は、この手紙を、誰が、誰に宛てて、いつ、書いたものかを記しておくためのもの。日付は、年月日を書き入れるが、慶事などの場合は「吉日」とする場合もある。
発信者の名前が連名になるときは、下位の者から書き始める。上位者になるほど、最後に書く「宛名」に近くなるように、との配慮だ。
脇付は、宛名の人物に対して、へりくだった気持ちを表すための言葉。宛名の左下の位置に、小さめの文字で書き添える。
一般的な脇付 | 貴下 机下 |
目上の人への脇付 | 侍史 尊前 |
両親への脇付 | 膝下 尊下 |
■手紙の基本的な書き方 その他
添え文
追伸にあたるもの。主文に補足しておきたい事柄を付け足すときに使う。書きはじめに「追伸」「追って」と書く。書く文字は、本文よりも少し小さめにする。
なお、目上の人への手紙で添え文を付けるのは失礼にあたるので、控えたい。また、慶事の場合、弔事の場合は、それぞれ「返し書き」「繰り返し」を意味することとなり、縁起が悪いとされるので、添え書きはしないようにするのが礼儀。
まとめ
手紙を書くルールの基本は、「相手と自分との関係をわきまえて、適切な言葉を使い分けること」だ。日常の会話では使わない、手紙独特の言い回しも多いので、手紙の基本的な書き方やマナーをまとめた本などを見ながら練習してみよう。
ただし、あまりにも形式にこだわりすぎた手紙も味気ない。丁寧な言葉遣いを選びながらも、素直な表現で、相手に気持ちの伝わる手紙を書いてみよう。